私たちは同じ世界を生きているようで、実は一人ひとり、感じ方も考え方も、学び方も異なります。
その違いを「配慮すべきもの」としてだけではなく、新しい価値や創造性を生み出す力として捉えること。
それが、ニューロダイバーシティプロジェクトが目指している社会です。
「ちょっと先のおもしろい未来2026」では、ニューロダイバーシティプロジェクトの一環として、「脳や神経の感じ方は人それぞれ違う」というテーマのもと、体験型展示「みんなの脳世界」を出展いただきます。
展示を通して、多様な脳のあり方を、知識としてだけでなく、実際に見て、触れて、感じながら体験することができます。
また、テクノロジーや環境の工夫によって、一人ひとりの違いが力として活かされる可能性についても、体験を通じて知ることができます。
今回は、そんなニューロダイバーシティプロジェクトがこの活動を始めた背景や、体験型展示に込めた思い、そして来場者に持ち帰ってほしいことについて伺いました。
「脳や神経の感じ方は人それぞれ違う」という活動を始めたきっかけは何ですか?
――子どもの創造性や学びに関する活動を進める中で、このテーマに取り組むようになったとのことですが、どのような背景があったのでしょうか。――
これまで、子どもの創造性や学びに関わるさまざまな活動を行う中で、不登校や学習への困難、生きづらさ、そして子どもたちのウェルビーイングの低さといった課題が見えてきました。
そうした課題は、教育の工夫だけでは解決しきれない大きなものでもあります。その背景の一つにあると感じたのが、脳や神経の多様性でした。
私たちの社会は、気づかないうちに「平均的な人」を前提としてつくられている部分があります。けれど実際には、脳の特性も、ものの感じ方も、考え方も、学び方も、一人ひとり違います。
そしてそれは、子どもだけの話ではありません。大人も同じです。働き方やコミュニケーションの取り方、創造性の発揮の仕方も、人によって異なります。
だからこそ私たちは、「脳や神経の感じ方は人それぞれ違う」ということを社会の前提として捉えたいと考えました。その多様性を尊重し、活かせる学び方、働き方、生き方を実現するために、ニューロダイバーシティプロジェクトを立ち上げました。
目指しているのは、多様性にただ配慮する社会ではありません。多様性から新たな価値や創造性が生まれる社会です。
教育だけでなく、企業、文化、テクノロジー、まちづくりなど、さまざまな領域で、多様な脳のあり方が活かされる社会をつくっていきたいと考えています。
なぜ、研究成果を「体験できる展示」として届けるのですか?
――研究の成果を論文や解説ではなく、実際に体験できる展示として見せることを大切にされているそうですね。そこには、どのようなこだわりがあるのでしょうか。――
私たちは、「みらいの当たり前」を創造することを目指しています。そのために、理解促進・技術開発・環境整備という3つの柱で活動を進めています。
「みんなの脳世界」展は、その中でも理解促進を担う取り組みです。
ニューロダイバーシティは、言葉や知識として知るだけではなく、実際に体験することで初めて気づけることがたくさんあります。だからこそ私たちは、論文や説明だけではなく、体験型の展示という形を大切にしています。
展示では、脳や感覚の多様性を体感してもらうだけではありません。すでに世の中で開発されている最先端の技術によって、個人の力を補完したり、拡張したりできることも伝えています。
また、環境や制度を工夫することで、生きづらさを減らせることも、実際に見て、触れて、感じてもらえるようにしています。
そして、体験して終わりではありません。
「自分には何ができるだろう」
「社会をどう変えていけるだろう」
そう考えるところまでつなげることを大切にしています。
多様性を理解するだけでなく、その多様性から新しい価値を生み出す社会を、一緒につくるきっかけになることを目指しています。
来場者にいちばん持ち帰ってほしいものは何ですか?
――この活動を通して、来場された方に特に持ち帰ってほしいことは何でしょうか。――
一番持ち帰っていただきたいのは、「人はみんな違うのが当たり前であり、その違いは価値になり得る」という視点です。
同じ世界を見ていても、感じ方や考え方、得意なことは一人ひとり異なります。
展示を通して、その多様性を体験的に理解してもらうとともに、テクノロジーや環境の工夫によって、誰もが自分らしく力を発揮できる社会を実現できることを伝えたいと考えています。
そして最終的には、来場した方自身が、
「自分には何ができるだろう」
「自分の職場や学校、地域では、どんなことから始められるだろう」
と考えるきっかけを持ち帰っていただけたら嬉しいです。
多様な脳のあり方が活かされる未来へ
「脳や神経の感じ方は人それぞれ違う」。
この言葉は、特別な誰かだけに関わるものではありません。子どもにも、大人にも、学校にも、職場にも、地域にも関係する、私たちの社会全体に関わるテーマです。
違いをなくすのではなく、違いを前提にする。
困りごとに配慮するだけではなく、その違いから新しい価値や創造性を生み出していく。
「みんなの脳世界」が目指しているのは、そんな未来です。
体験を通して、自分自身や周りの人の感じ方を見つめ直すこと。
そして、自分のいる場所で何ができるかを考え始めること。
その小さな一歩が、多様な脳のあり方が活かされる社会につながっていくのかもしれません。